マネジメントの悩み|逆ギレする部下とのコミュニケーション

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部下の育て方に悩んでいるマネジメント職の人は、きっと少なくないですよね。

先日、私は友人から、まさにそんな相談を受けました。彼女の部下はポテンシャルは高いものの、どうにも仕事の進め方がうまくいかない、というのが悩みのタネだそう。例えば、タスク管理が苦手で優先順位がつけられなかったり、本人は「できています!」と自信満々なのに、肝心なポイントが全く理解できていなかったり。それを指摘すると、まさかの逆ギレ…。

「どうすれば、相手を傷つけずにモチベーションを引き出して、良い方向に導けるんだろう…」と、友人は頭を抱えていました。これは、多くの職場で起こりうる、根深い問題かもしれません。

今回は、そんな彼女に私自身が実践していることをアドバイスしました。今一度、職場で起きる「後回し・勘違い・逆ギレ」について、考えたいと思います。

目次

なぜ3分タスクは後回しにされるのか

「メール1本返すだけ」「資料を共有フォルダに入れるだけ」。こんな3分もあれば終わるようなタスクが、なぜかいつまでも放置されている…。そんな光景、あなたの職場でも見覚えがありませんか?実はこれ、優先順位の付け方の認識がそもそも間違っている可能性が高いと思います。この先延ばしは、結果としてチーム全体の生産性を蝕んでいくと思います。

「3分で終わるのに手がつかない」人の脳みそで起きていること

私たちの脳は、とても賢いようでいて、実はかなりサボりたがり。特に、「今すぐ得られる快楽(ラクをすること)」を、「将来得られる大きな報酬(仕事を片付けた達成感)」よりも優先してしまう傾向があります。これを心理学では「現在志向バイアス」と呼んだりします。

つまり、「3分タスク」を目の前にしたとき、脳は「たった3分だけど、今はやりたくないな。後でやればいいや」と、目先の“やらない”という快適さを選んでしまうのです。未来の自分なら、きっとうまくやってくれるだろう、と根拠なく期待してしまうんですね。

後回しにする原因は“時間”じゃなくて“感情”

仕事を後回しにする、いわゆる先延ばしの根本的な原因は、作業にかかる“時間”ではありません。実は、そのタスクに対する“感情”が大きく影響しています。

  • 「このメール、なんて書けば角が立たないかな…」(面倒くさい)
  • 「この作業、もし間違えたら怒られるかも…」(不安・恐怖)
  • 「完璧な状態で提出したいから、まだ始められない」(完璧主義)

こんな風に、ネガティブな感情がタスクにまとわりついていると、脳はそれを避けようとします。たとえ3分で終わる作業でも、感情的なコストが高いと、人はなかなか手をつけられないのです。この感情的な側面を理解することが、マネジメントの第一歩です。

タスクの重さは“作業量”より“心理的ハードル”で決まる

タスクの「重さ」は、単純な作業時間だけでは測れません。むしろ、目に見えない「心理的ハードル」の方が、行動を妨げる大きな要因になります。

例えば、「Aさんに電話して確認する」というタスク。作業自体は5分もかからないかもしれません。しかし、

  • Aさんが忙しいかもしれない
  • そもそも電話が苦手だ
  • 何を聞けばいいか、うまく整理できていない

といった心理的なハードルがあると、「電話一本」がとてつもなく重いタスクに感じられてしまうのです。効果的なタスク管理とは、この「心理的ハードル」がどこにあるのかを見極め、取り除いてあげる仕事術とも言えます。

後回し癖が引き起こす連鎖ダメージ

私が昔いたチームでの話です。あるメンバーが、簡単な報告書の提出を後回しにし続けました。最初は「まあ、後でいいか」くらいに思っていたのですが、その報告書がないと、次の工程を担当する別のメンバーが作業を始められません。

「あの件、どうなった?」と確認するたびに、「すみません、すぐやります!」という返事。しかし、一向に出てこない。結果、プロジェクト全体に遅れが生じ、クライアントへの納期が迫る中でチーム全体が深夜残業をする羽目になりました。

たった一つの「後回し」が、チームの生産性を下げ、メンバー間の信頼関係にヒビを入れ、マネジメントする側の精神をすり減らす…。これが、職場で起きるリアルな連鎖ダメージです。

私の友人の部下も、まさに心理的側面からタスクを先延ばしにしているように見受けれらました。これらを説明した上で、今一度、部下とコミュニケーションを図り、何が心理的に邪魔をしているのかを探るようにアドバイスをしました。

職場の“やっかい三銃士”をどう扱うか

それでは後回し、勘違い、そして逆ギレなど、この手ごわい“やっかい三銃士”とどう向き合えば、チームはうまく回るのでしょうか。私が実践してきた、それぞれのタイプへのアプローチ方法をご紹介します。

3分タスクを永遠に後回しにする人の扱い方

このタイプには、「考える隙を与えない」のが一番です。「後でやろう」と思わせる前に、その場で片付けてもらう仕組みを作ります。

  • 2分ルールの導入: 「2分(または5分)で終わるタスクはその場でやる」というシンプルなルールをチームで共有します。
  • その場で一緒にやる: 「〇〇さん、このメール返信、今一緒に文面考えちゃおうか」と、その場で行動を促します。一度手をつけてしまえば、意外とすんなり終わるものです。
  • タスクを分解する: 「企画書作成」のような大きなタスクは、「まず参考資料を3つ探す」のように、最初の心理的ハードルが低い小さなステップに分解して指示します。

大切なのは、「さあ、やれ」と突き放すのではなく、「最初の1歩」を軽くしてあげることです。これが先延ばしを防ぐタスク管理のコツです。

自分では“できてるつもり”の人への現実の見せ方

本人は悪気なく「できてます!」と思っているのが、このタイプの難しいところ。頭ごなしに否定すると、心を閉ざしてしまいます。ここでは、「事実」を客観的に見せる工夫が必要です。

  • 期待値と成果物のギャップを見せる: 「このタスクでお願いしたかったのは、このAとBの2点だったんだ。提出してくれた資料を見ると、Aはできているけど、Bの部分がもう少し具体的に書かれていると、もっと良くなると思うんだけど、どうかな?」と、事実ベースで具体的に伝えます。
  • チェックリストを使う: 指示を出す際に、完了条件を箇条書きにしたチェックリストを渡します。そして、提出物を確認する際に、そのリストを元に「この項目はOKだね。この項目は、どういう意図でこうなったか教えてくれる?」と一緒に振り返ります。
  • 第三者の視点を入れる: 「この資料、クライアントの〇〇さんだったら、どこが気になると思う?」と、第三者の視点を借りて客観的に見直す機会を作ります。

「できていない」と断罪するのではなく、「もっと良くするための作戦会議」という雰囲気を作ることが、相手の勘違いをスムーズに修正するコツです。

逆ギレして責任転嫁するタイプの火消し術

指摘された瞬間に、「でも」「だって」と反論し、しまいには「〇〇さんが言ったからです!」と責任転嫁を始めるタイプ。感情的になっている相手に、正論は火に油を注ぐだけです。

  • まずは「受け止める」姿勢を見せる: 「そうか、君はそう感じたんだね」と、相手の感情を一度受け止めます。反論せず、まずはクールダウンさせるのが最優先です。
  • 主語を「私」に変えて伝える: 「(あなたは)なんでできないんだ!」ではなく、「(私は)どうすれば君がスムーズに仕事を進められるか、一緒に考えたいと思っているんだ」と、I(アイ)メッセージで伝えます。攻撃的なニュアンスが和らぎ、協力的な対話に持ち込みやすくなります。
  • 事実と感情を切り分ける: 「〇〇の件で困っている、という気持ちはわかった。その上で、事実として、このタスクが締め切りを過ぎているという問題がある。まずはこの問題をどう解決するかを話さない?」と、感情と事実を切り分けて、問題解決に焦点を当てます。

これらを行うことで、火に油を注ぐことなく、冷静に相手にも理解をしてもらえると思います。

「言っても動かない人」が動く環境づくりの基本設計

個別の対応も大切ですが、より根本的な解決を目指すなら、「言っても動かない」人が生まれにくい「環境」や「仕組み」を設計することが重要です。これが生産性を高めるマネジメントの本質です。

衝突を避けつつ、相手の認知を修正するコミュニケーション

相手の「勘違い」や「思い込み」(認知)を修正しようとするとき、正面からの衝突は避けたいもの。そこで有効なのが、質問をうまく使うコミュニケーションです。

  • 「なぜ」ではなく「どうすれば」で聞く: 「なぜできなかったの?」と詰問するのではなく、「次うまくやるためには、どういうサポートがあったらいいかな?」と未来志向の質問をします。
  • 相手に言語化させる: 「このタスクのゴールって、何だと思う?」「一番難しいのはどの部分?」と質問し、相手自身の言葉で考えや認識を説明してもらいます。話しているうちに、本人が自分の勘違いに気づくことも少なくありません。

この対話を通じて、マネージャーは「教える人」から「一緒に考えるパートナー」へと立ち位置を変えることができます。

逆ギレ・勘違い・後回しを“仕組みで抑える”チーム運営のコツ

個人の資質に頼るのではなく、チーム全体の「仕組み」で問題を未然に防ぎましょう。

  • タスクの「完了定義」を明確にする: 「〇〇を提出すれば完了」ではなく、「〇〇のデータ入力が完了し、△△さんに確認依頼のチャットを送った状態で完了」のように、誰が見てもわかる具体的な完了条件を設定します。
  • 朝会・夕会で進捗を可視化する: 毎日短時間でも「今日やること」「困っていること」を共有する場を設けます。これにより、タスクの遅延や認識のズレを早期に発見できます。
  • 情報共有のルールを徹底する: 「口頭での指示は必ずチャットでも残す」「資料はすべて指定のフォルダに入れる」といったルールを徹底することで、「言った・言わない」問題や「あの資料どこだっけ?」という無駄な時間をなくします。

結局、ラクになるのは“態度”じゃなくて“システム”を変えたとき

人の態度やモチベーションに一喜一憂するのは、とても疲れる仕事です。私自身、かつては「なぜ彼はやる気を出してくれないんだ」と悩んだ時期がありました。しかし、ある時から「やる気に頼らず、誰がやっても一定の成果が出るシステムは作れないか?」と考えるようにシフトしました。

チェックリスト、明確なルール、定期的な進捗確認。こうした「システム」を整えることで、個人の感情や能力の波に左右されにくい、安定したチーム運営が可能になります。結果的に、それがマネージャーである自分自身を一番ラクにしてくれるのです。

まとめ/明日から職場で試せる3つの即効ステップ

ここまで私が友人にしたアドバイスを書いてきましたが、最終的には、職場のタスク管理とコミュニケーションが重要です。

心理的ハードルを取り除く環境に変える

部下が仕事を後回しにしている時、その原因は「面倒くさい」という感情かもしれません。「この部分、ちょっとややこしいから、最初の叩き台だけ一緒に作ろうか」と声をかけるだけで、相手の心理的ハードルはぐっと下がります。完璧を求めず、まずは「着手」をサポートする姿勢が大切です。

事実ベースで話す習慣を徹底する

「君のやり方はダメだ」といった主観的な評価は絶対にしてはダメです。「提出されたレポートには、当初お願いしたBの視点が抜けているね」というように、客観的な事実を元に話すことを徹底しましょう。データや記録、チェックリストなど、「事実」を示せるツールを普段から活用するのがおすすめです。これにより、不毛な感情論を避けることができます。

感情に飲まれない“低温対応”を身につける

相手が逆ギレしたり、感情的になったりした時こそ、こちらは冷静に。「そうか、腹が立ったんだね」と相手の感情は受け止めつつも、同じ温度で返さない低温対応を心がけましょう。嵐が過ぎ去るのを待つように、相手がクールダウンしてから、改めて「問題そのもの」について話し合う。この距離感が、自分自身を守る鍵です。

マネジメントは正解がないからこそ悩ましい仕事です。でも、少し変えるだけで、驚くほど現場がスムーズに動き出すこともあります。私の友人も、再度チャレンジしてみるそうです。

悩みが尽きないのがマネジメントですが、チームを最大化するための自分自身のタスクと受け止め、仕事に取り組めたら嬉しいですね。

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