昨日、神戸市で発生したエレベーター内での痛ましい刺傷事件のニュースを見て、本当に恐ろしくなりました。被害に遭われた方のご冥福を心からお祈りいたします。
このニュースは、決して他人事ではありません。特に、私のように一人暮らしをしている女性や、夜遅くに帰宅することが多い方にとって、エレベーターという日常的な空間に潜む危険性を改めて突きつけられたのではないでしょうか。女性が一人でいる時に発生しやすい事故や事件について、私たちはもっと注意し、身を守る方法を知っておくべきだと痛感しています。
いつ起きるかわからない危険について考えてみました。
エレベーターはなぜ危険?数字で見る密室の犯罪発生率
そもそも、なぜエレベーターは危険な場所なのでしょうか。「密室だから」というのは感覚的にわかりますが、実際のデータはさらに深刻な現実を示しています。
警視庁のデータが示す「共同住宅」での犯罪傾向
警視庁が公表しているデータを見てみましょう。令和5年中に都内で発生した侵入窃盗のうち、実に48.3%が3階建て以下の共同住宅で発生しています。さらに、4階建て以上の共同住宅(マンションなど)も24.9%を占めており、これらを合わせると共同住宅全体で7割以上の侵入窃盗が起きている計算になります。
(出典:警視庁「令和5年中の侵入窃盗の傾向」)
これは侵入窃盗のデータですが、犯罪者が共同住宅を狙いやすいという事実は、女性を狙った性犯罪や暴行事件にも通じます。そして、その侵入経路や犯行現場として、エレベーターや階段、廊下といった共用部が使われるケースは少なくありません。
エレベーターは、
- 密室で逃げ場がない
- 外部から中の様子が見えない
- 助けを呼んでも声が届きにくい
といった特徴があり、犯罪者にとっては非常に好都合な空間なのです。このような場所で発生する事故や事件には、特別な注意が求められます。
「オートロックだから安心」は大きな間違い
「私のマンションはオートロックだから大丈夫」と、心のどこかで思っていませんか?
オートロックの抜け道は、住民が出入りするタイミングを狙って一緒に入り込む「共連れ(ともづれ)」という手口で、いとも簡単に突破されてしまいます。
今回の神戸の刺傷事件でも、容疑者は女性の後をつけてマンション内に侵入したと報じられています。オートロックを過信せず、「共用部にも危険は潜んでいる」という意識を持つことが、防犯の第一歩です。

【乗る前が勝負】エレベーターに乗る前の5つのチェックリスト
エレベーターの防犯は、ドアが閉まる前にほとんど決まると言っても過言ではありません。乗る前に少しだけ意識を向けることで、危険をぐっと減らすことができます。
チェック1:周囲に不審な人はいないか
エレベーターホールに着いたら、まず周囲を見渡しましょう。誰かを待っているわけでもないのにうろついている人や、じっとこちらを見ている人はいませんか?「何かおかしいな」という自分の直感を信じることが大切です。
チェック2:スマホをいじりながら「ながら乗り」をしない
ついやってしまいがちですが、スマホを見ながらエレベ-ターを待ったり、乗ったりするのは絶対にやめましょう。注意が散漫になり、背後から近づく人に気づけません。エレベーターに乗り込むまでは、周囲への警戒を怠らないようにしてください。また、イヤホンも危険です。後ろに人がいても気づかないことが多いからです。
チェック3:知らない人とは「時間差」で乗る勇気を持つ
少しでも不安を感じる相手と二人きりになりそうなら、勇気を出して乗るのを見送りましょう。「お先にどうぞ」と譲ったり、急いでいるフリをしてやり過ごしたりするのが有効です。気まずいかもしれませんが、あなたの安全には代えられません。
チェック4:壁際に立ち、すぐボタンを押せる位置を確保する
エレベーターに乗る際は、操作盤の近くの壁際がベストポジションです。隅に追い詰められるのを防ぎ、いざという時に「非常ボタン」や「各階のボタン」をすぐに押せるからです。このボタンの位置を意識するだけでも、心構えが変わります。
チェック5:防犯カメラの位置をさりげなく確認する
エレベーターに乗ったら、防犯カメラがどこにあるかを確認する癖をつけましょう。カメラがあることを意識するだけで心に余裕が生まれますし、万が一の際には、カメラに映るように動くという選択肢も生まれます。
【乗ってからでも遅くない】エレベーター内での具体的な護身術
「乗る前に気をつけるべきだった…」と後悔しても、まだできることはあります。乗ってからでも使える護身術を知っておきましょう。
常にドアの前に立つ、これが鉄則
エレベーターの中では、できるだけドアの近くに立ちましょう。すぐに降りられる位置を確保することが大切です。相手に背を向けず、いつでも逃げられる体勢を維持してください。
もしもの時のために。カバンは盾、大声は武器になる
万が一、相手が襲いかかってきたら。持っているカバンや荷物は、体を守るための「盾」になります。顔や体の前に構えて、相手との距離を取りましょう。
そして、何よりも強力な武器は「大声」です。「火事だー!」と叫ぶのが効果的だと言われています。なぜなら、「助けて」よりも周囲の人が関心を持ちやすく、異常事態だと伝わりやすいからです。恥ずかしがらずに、全力で叫ぶ勇気を持ってください。

【降りた後も油断しない】自宅の玄関を開けるまでが防犯対策
エレベーターを降りても、まだ安心はできません。自宅のドアを開けて中に入るまで、気を抜かないでください。
自宅の階に着いてもすぐに降りない
エレベーターを降りる前にも、ドアの窓から外の様子をうかがいましょう。誰かが待ち伏せしている可能性もゼロではありません。少しでも怪しい気配を感じたら、ドアが開いてもすぐには降りず、一度ドアを閉めて下の階に戻るなどの対応を。
鍵はカバンから出しておく、玄関前でもたつかない
玄関の前でカバンの中をゴソゴソと探すのは非常に危険です。その隙を狙われる可能性があります。エレベーターを降りる前や、廊下を歩いているうちに、鍵を手に持っておきましょう。スムーズに家に入ることが、最後の防犯対策です。
まとめ:小さな意識が、あなた自身を守る最大の盾になる
怖がりすぎる必要はないけれど、備えは大切
ここまで様々な対策をお伝えしてきましたが、毎日ビクビクしながら生活する必要はありません。ただ、神戸のような悲しい事件が起きているのも事実です。
大切なのは、「エレベーターは危険な場所になる可能性がある」ということを心の片隅に置いておくこと。そして、「もしも」の時にどう行動するかを少しだけシミュレーションしておくことです。その小さな意識と備えが、いざという時にあなた自身を守る最大の盾になります。
私が持ち歩くようになった「お守り代わりの防犯グッズ」
最後に、私が例のヒヤッとした経験から持ち歩くようになったものをご紹介します。それは、防犯ブザーです。
最初は「大人が持つのは恥ずかしいかな」と思いましたが、今はキーホルダータイプのおしゃれなものもたくさんあります。カバンのすぐ取り出せる場所につけておくだけで、不思議と安心感が違います。これぞまさしく、私の「お守り」です。
あなたも、自分に合ったお守り代わりの防犯対策を見つけてみてください。この記事が、そのきっかけになれば幸いです。