推しを想う気持ちと、ストーカー行為は全くの別物です
「推しがいる生活って、本当に毎日が輝きますよね!」
大好きなアイドルの新しい情報に心を躍らせ、ライブで同じ時間を共有できるだけで満たされる。その純粋な「好き」という気持ちは、私たちの日常に彩りとパワーを与えてくれる、かけがえのない宝物です。
でも、その大切な気持ちが、もし一線を越えてしまったら…?
相手の気持ちを考えず、一方的に自分の欲望を押し付ける行為。それはもう「応援」ではなく、相手を恐怖に陥れる「加害」でしかありません。
「好き」が「恐怖」に変わる瞬間
応援しているアイドルのプライベートを過度に詮索したり、非公開の情報を追い求めたりする行為は、推しを苦しめるだけ。彼らにとって、ファンの存在が安心できるものではなく、恐怖の対象に変わってしまったとしたら、それほど悲しいことはありませんね。
純粋な応援と、ストーカー行為は全くの別物です。その境界線は「相手への思いやりと配慮があるかどうか」だと私は思います。
AirTagストーカー事件で感じた恐怖
最近知ったのですが、ストーカーの手口もかなり巧妙になってきているとのこと。AppleのAirTag(エアタグ)に代表される紛失防止タグを悪用したストーカー事件があるそうです。
「財布をなくしてもすぐ見つかる」「ペットが迷子になっても安心」
そんな夢のアイテムだと思っていたんですよね。友人が「これ、便利だよ!」と嬉しそうに見せてくれた時も、未来の道具みたいだと純粋に感動していました。
でも、その便利なはずのものが、人の心を傷つけ、恐怖に陥れる道具になるなんて…。プレゼントのぬいぐるみの中にこっそり忍ばせる、なんていう卑劣な手口もあると知り、本当に血の気が引きました。もしかしたら、知らないうちに自分の持ち物に仕掛けられているかもしれない…。お子さんがいらっしゃる方は本当に注意が必要です。
有名人も被害に…エスカレートするストーカーの現実
ストーカー被害は、私たち一般人だけでなく、多くの芸能人や著名人にも及んでいます。その中でも、世界的なスターであるBTSのジョングクさんや、サッカー日本代表の中村敬斗選手が受けた被害は、私たちファンにとっても衝撃的な事件でした。
BTSジョングクさんにまで及んだ卑劣な行為
世界中のファンから愛されるBTSのジョングクさん。しかしその人気故に、彼は繰り返し深刻なストーカー被害に苦しめられています。
報道によると、これらの行為は国籍も年齢も異なる複数の人物によって、何度も繰り返されているとのこと。心安らぐはずのプライベートな空間が、全く気の休まらない場所になってしまう恐怖は、想像を絶するものがあります。
ファンであれば、彼に幸せでいてほしいと願うのは当然のこと。しかし、このような行為は彼の心を深く傷つけ、活動にさえ影響を及ぼしかねない、許されざる犯罪行為です。
サッカー中村敬斗選手に起きたSNSストーカー事件
被害は物理的なつきまといだけではありません。サッカー日本代表の中村敬斗選手は、SNS上でストーカー被害に遭いました。
報道によれば、面識のない60代の女性が、恋愛感情を満たす目的で、SNSのダイレクトメッセージ機能を使い、好意を伝える内容や性的なメッセージを一方的に、そして執拗に送りつけていたとのこと。
SNSはファンと選手が繋がれる貴重なツールですが、一歩間違えれば、このように精神的に相手を追い詰める凶器にもなり得ます。
なぜ「好き」という気持ちは暴走してしまうのか?
「どうしてそんなことを…」と、多くの人が加害者の行動を理解できないと感じるでしょう。
でも誰しも、相手の気持ちが見えなくなり、自分の感情ばかりが先走ってしまった経験は少なからずあるのではないでしょうか?
もちろん、ストーカー行為とは全く次元の違う話ですが、「相手の立場に立つ」という理性のブレーキが効かなくなる瞬間は、誰にでも訪れる危険性があるのかもしれません。
「好き」という強い感情は、時に視野を狭くさせます。「これだけ好きなんだから、相手もきっと喜んでくれるはず」「自分の気持ちを分かってほしい」という一方的な思い込みが、相手の「NO」というサインを見えなくさせてしまう。その結果、相手が恐怖を感じていることにも気づかず、行為がどんどんエスカレートしていく…。ストーカーの心理の根底には、そんな自己中心的な思考の沼があるのかなと感じました。
私たちの生活を守る「ストーカー規制法」とは?
相次ぐ悪質なストーカー事件を受け、私たちの安全を守るための法律も進化しています。2024年5月に成立した「改正ストーカー規制法」は、現代のストーカー手口に対応するための重要な一歩です。
これまでの法律では取り締まれなかった「見えないストーカー」
これまでのストーカー規制法は、尾行や待ち伏せ、無言電話など、主に目に見える形での「つきまとい等」を規制の対象としていました。
しかし、GPS機器や紛失防止タグを使った手口は、相手の前に姿を現しません。遠隔から一方的に、そして継続的に相手の居場所を監視する「見えないストーカー」行為は、従来の法律の枠組みでは十分にカバーしきれていなかったのです。
警察庁の発表によると、GPS機器を悪用したストーカー事案は年々増加傾向にあり、警察への相談件数は883件とのこと。被害者は「誰かに見られている」という精神的な苦痛を常に感じているのに、犯人を罰するのが難しいという、もどかしい状況がありました。
ついに改正へ。GPSやAirTagの悪用が明確な犯罪に
2025年11月11日、忘れ物防止などに使う「紛失防止タグ」を悪用した位置情報の取得を禁じ、警察がストーカー行為の中止を文書で求める「警告」を警察の判断のみで出せるようにするなどのストーカー規制法改正案を閣議決定がされました。
少しずつですが、明確に「犯罪」として取り締まることができるようになってきました。
【重要】今すぐできるストーカー被害の確認・対策方法
では、もし不審なタグを仕掛けられたら、どうすれば発見できるのでしょうか?幸い、Appleなどもこの問題を深刻に受け止めており、私たち自身で確認できる対策機能を提供してくれています。
【iPhoneユーザー向け】身に覚えのないAirTagを検知する方法
iPhoneユーザーの方は、比較的簡単に不審なAirTagを見つけることができます。
- 自動通知機能:持ち主から離れたAirTagが、あなたの動きと一緒に移動していると、iPhoneの画面に「AirTagがあなたと一緒に行動しています」という通知が自動で表示されます。(※iOS 14.5以降)
- 「探す」アプリで手動スキャン:「探す」アプリを開き、「持ち物を探す」タブから「自分のものではない持ち物」を検出する機能を使うこともできます。
- 音を鳴らして探す:通知をタップすると、そのAirTagから音を鳴らすことができます。音を頼りに、カバンの中や車内などを探してみてください。
【Androidユーザー向け】公式アプリで不審なタグを見つける
「iPhoneじゃないから大丈夫」ではありません。Androidユーザーの方も、Apple公式のアプリで対策が可能です。
- 「トラッカー検出」アプリ:Google Playストアで提供されているApple公式アプリ「トラッカー検出」をインストールしましょう。
- 手動でスキャン:アプリを起動し、「スキャン」をタップすると、自分の近くにある持ち主不明のAirTagなどを検出してくれます。少しでも不安を感じたら、定期的にスキャンする習慣をつけると安心です。
もし不審なタグを見つけたら?絶対にやってはいけないこと
万が一、身に覚えのないタグを見つけても、慌ててはいけません。正しい対応が、あなた自身を守ることに繋がります。
見つけたら、まずは落ち着いて、その場から動かさずに警察に相談することが最も重要です。
一人で抱え込まないで。すぐに相談できる窓口
「考えすぎかな?」「誰に相談すればいいか分からない…」
ストーカー被害の怖いところは、一人で抱え込んでしまいがちな点です。でも、あなたの不安や恐怖は、決して気のせいではありません。ためらわずに専門機関に助けを求めてください。
緊急ではないけど不安な時は「警察相談専用電話 #9110」
「最近、誰かにつけられている気がする」「不審なメッセージが届いて怖い」など、今すぐの危険はないけれど不安を感じる場合は、まずはこちらに電話しましょう。全国どこからでも繋がる警察の相談窓口で、専門の相談員が話を聞き、今後の対応についてアドバイスをくれます。
身の危険を感じたら迷わず「110番」と最寄りの警察署へ
「今、家の前に不審な人がいる」「身の危険を感じる」という切迫した状況では、絶対に我慢しないでください。すぐに110番通報するか、最寄りの警察署に駆け込みましょう。不審なタグを見つけた場合も、それを証拠として持参し、直接相談するのが確実です。
まとめ:正しい知識で、自分と大切な推しを守ろう
紛失防止タグは、正しく使えば私たちの生活を豊かにしてくれる素晴らしい技術です。しかし、どんな技術も使う人間次第で、善にも悪にもなり得ます。
今回のストーカー規制法改正は、私たちを守るための大きな一歩です。しかし、それに甘えるのではなく、私たち自身が「自分の身は自分で守る」という意識を持つことが、何よりも強力な防犯対策になります。
そして、推し活を楽しむ人たちだからこそ、純粋な「応援」と「ストーカー行為」の境界線をしっかりと認識し、決してその一線を越えないこと。超えそうな人を見かけたら注意してあげること。これが未然防止の対策です。
幸い、私の周りにはそういう人はいませんが、世の中にはいろいろな方がいるので、常に用心して気をつけたいものですね。
