先日、友人と食事に行ったときのことです。「老後2000万円問題とか聞くし、私もついにNISA始めたんだ!」と嬉しそうに話してくれました。将来のために行動を起こすなんて素晴らしいな、と思ったのも束の間、続く言葉に私は思わず「えっ!?」と聞き返してしまいました。
「いつも使ってる銀行で、NISA口座を開設してきたよ」
その一言が、ずっと心に引っかかっています。もちろん、NISAという制度を利用して投資を始めること自体は、本当に良いことです。でも、もしあなたが将来のために、少しでも多く資産を増やしたいと考えているなら、銀行でNISA口座を開設するという選択は、正直なところ、とてももったいないかもしれません。
もしこの記事を読んでいる方が同じように銀行で新NISAを始めようとしていたり、すでに始めてしまっていたりするなら、ぜひ知っておいてほしい「もったいない」理由と、その解決策を参考にしていただければと思います。
なぜ?多くの人が銀行でNISAを始めてしまう3つの理由
そもそも、なぜ多くの人が銀行でNISAを始めてしまうのでしょうか。私の友人との会話や周りの人の話を聞いていると、理由は大きく3つあるように感じます。
- 理由1:「給与振込口座があるから」という手軽さの罠
- 理由2:「対面で相談できる」という安心感
- 理由3:そもそも証券会社との違いをよく知らない
「NISAって、結局どこで始めても同じ制度でしょ?」。実は、これが一番多い理由かもしれません。NISAという非課税制度自体は国が定めたものなので、その仕組みはどこで口座開設しても同じです。
しかし、「どこで」つまりどの金融機関で口座を開設するかによって、選べる商品のラインナップや手数料、ポイント還元などのサービスが全く異なります。

ちょっと待って!銀行NISAの「もったいない」3つのデメリット
では、具体的に銀行でNISAを始めると、どんな「もったいない」ことがあるのでしょうか。ここでは、特に知っておいてほしい3つのデメリットを解説します。
デメリット1:選べる商品が少ない?投資の選択肢が限られる現実
銀行でNISA口座を開設すると、まず直面するのが「選べる商品の少なさ」です。銀行が取り扱う投資信託は、その銀行の系列の運用会社が作った商品や、販売手数料が高めに設定されている商品が中心になりがちです。
もちろん、それらが悪い商品というわけではありません。しかし、選択肢が少ないということは、より手数料が安く、より自分の投資方針に合った商品を自ら選ぶ機会を失っていることになります。
ネット証券と銀行の取扱商品数を比較
実際にどれくらい違うのか、金融庁のデータをもとに見てみましょう。つみたて投資枠の対象となっている商品の数は、金融機関によって大きく異なります。
金融機関の種類 | 取扱商品数の例(つみたて投資枠) |
主要ネット証券 | 200本以上 (SBI証券、楽天証券など) |
メガバンク | 20本~30本程度 |
地方銀行 | 10本~20本程度 (金融機関による) |
※2024年5月時点の金融庁「NISA特設ウェブサイト」等の公表データより作成。あくまで一例であり、実際の数は変動します。
この表を見ると、その差は一目瞭然です。ネット証券はまるで巨大なショッピングモールのように品揃えが豊富ですが、銀行は昔ながらのセレクトショップのようなイメージ。品揃えが豊富な方が、自分にぴったりの一着(投資信託)を見つけやすいのは当然ですよね。
デメリット2:実は損してる?目に見えにくい手数料の話
投資において、手数料は利益を確実に減らしてしまうコストです。特にNISAのような長期投資では、わずかな手数料の差が、将来の資産に大きな影響を与えます。
注意したい手数料は主に2つです。
- 購入時手数料: 商品を買うときにかかる手数料。ネット証券では無料(ノーロード)が当たり前ですが、銀行の窓口では2~3%かかる商品もまだ存在します。
- 信託報酬: 商品を保有している間、ずっとかかり続ける手数料。これが最も重要です。
デメリット3:ポイントが貯まらない・使えない?クレカ積立の恩恵ゼロ
これは今の時代、かなり大きなデメリットです。主要なネット証券では、投資信託の積立をクレジットカード決済(クレカ積立)に設定できます。そして、その決済額に応じてポイントが貯まるのです。
これは、ただ投資をしているだけで、普段の買い物と同じようにポイントがザクザク貯まっていくということ。貯まったポイントは、さらに投資に回したり(ポイント投資)、普段のお買い物に使ったりできます。
しかし、ほとんどの銀行NISAでは、このクレカ積立に対応していません。つまり、毎月同じ金額を積み立てていても、ネット証券なら得られたはずのポイントを取りこぼしている状態。年間で数千~数万ポイントの差がつくこともあり、非常にもったいないのです。
NISA口座は「ネット証券」がおすすめな理由
ここまで銀行NISAのデメリットをお話ししてきましたが、ではどこで始めるのが良いのでしょうか。結論から言うと、私は断然「ネット証券」をおすすめします。その理由は、銀行のデメリットをすべて解消してくれるからです。
メリット1:手数料が安いから、複利の効果を最大限に活かせる
メリット2:豊富な商品から、自分に合った投資先を選べる
メリット3:クレカ積立でポイントが貯まる!普段のお買い物以上にお得
クレカ積立はネット証券の最大の魅力の一つと言っても過言ではありません。毎月の積立をクレカ決済にするだけで、自動的にポイントが貯まり続けます。例えば、毎月5万円を積み立て、還元率が1.0%だとすると、年間で6,000ポイントも貯まります。10年続ければ6万ポイント。銀行口座からの引き落としでは、このポイントは1ポイントも生まれません。この差は大きいですよね。
【簡単3ステップ】銀行からネット証券へNISA口座を乗り換える手続き
「もう銀行でNISAを始めちゃったよ…」という方も、安心してください。NISA口座は年に1回、金融機関を変更することができます。手続きは少し手間に感じるかもしれませんが、将来の利益を考えれば、今行動する価値は十分にあります。
ステップ1:今の銀行で「勘定廃止通知書」をもらう
まずは、現在NISA口座を持っている銀行に連絡し、「金融商品取引業者等変更届出書」を提出します。すると、銀行から「勘定廃止通知書」または「非課税口座廃止通知書」という書類が発行されます。これが、NISA口座を引っ越しさせるための証明書になります。
ステップ2:新しい証券会社でNISA口座の開設を申し込む
次に、乗り換えたいネット証券の公式サイトから、NISA口座の開設を申し込みます。その際、「他の金融機関からNISA口座を移す」といった選択肢があるので、それを選んで手続きを進めましょう。
ステップ3:書類を提出して手続き完了!
ネット証券から送られてくる申込書類に必要事項を記入し、ステップ1で銀行から受け取った「勘定廃止通知書」と本人確認書類などを同封して返送します。書類に不備がなければ、数週間で手続きは完了し、新しいネット証券でNISAの取引が始められます。

まとめ:NISAはあなたの未来のための大切な投資。最初の口座開設が肝心です
友人の銀行でNISAを始めたという一言から、私がずっと伝えたかったことをお話ししてきました。
NISAは、私たちの未来を豊かにしてくれる可能性を秘めた制度です。だからこそ、その効果を最大限に引き出すことが重要です。
まだこれから、10年後、20年後積立をしていく中で、手数料やポイントの効果はとても大きいはずです。もし今、銀行でNISA口座を開設しているなら、今からでも決して遅くはありません。未来のために、証券口座への変更をおすすめしたいです。