「またあの人の自慢話が始まった……」
「なんでいつも上から目線でアドバイスしてくるんだろう?」
職場の同僚や友人との会話で、こんなふうにモヤモヤした経験はありませんか?何気ない会話のはずなのに、終わった後になぜかドッと疲れてしまう。それはもしかすると、相手からのマウントによって、あなたのエネルギーが奪われているからかもしれません。
実は私自身、かつて職場の同僚や友人からのマウンティングに悩み、パワーを吸いとられていた時期がありました。なんでそんな自慢してくるのかがわからない、私はバカにされているのかななんて思ったりしました。しかし、心理学的な視点を学び、彼女の行動原理が「自信」ではなく「怖れ」にあると気づいたとき、少し視点が変わったのです。
この記事では、私の実体験を交えながら、マウントを取る人の隠された心理と、エネルギーを奪われないための具体的な対処法についてお話しします。
マウントをとる人の抱えている心の闇は深い劣等感だった
マウントを取る人を見ると、一見自信満々で、自分が一番正しいと思っているように見えますよね。声が大きく、態度は堂々としていて、周りを圧倒するオーラがある。しかし、私が観察と勉強を重ねてたどり着いた結論は、その人たちの心の中は「恐怖」でいっぱいだということです。
「能ある鷹は爪を隠す」ということわざがありますが、マウントを取る人はその逆です。本当に自信がある人は、わざわざ自分を大きく見せる必要がありません。自分の価値を自分で理解しているからです。
しかしマウントをとる人は、自分の価値を証明できない状態だったのだと思います。自分で自分の価値を証明できないから、人に羨ましがられたい、褒められたい、そんな気持ちが見え隠れする。つまり、深い劣等感隠すための鎧が、マウンティングという行動として表れているのです。
他人より優位に立たないと自分を保てない脆さ
マウントを取る人にとって、人間関係は「勝ち負け」の戦場です。対等な関係という概念が希薄で、常に「自分が上か、相手が上か」をジャッジしています。
あなたの周りにはいつも何かと闘い続けている人っていませんか?ギスギス、イライラしていて、いつも勝ち負けを考えている人。
これは非常に脆い精神状態です。なぜなら、誰かが自分より優れていると認めた瞬間に、自分の存在価値が崩壊してしまうような感覚に陥るからです。だからこそ、必死になって相手の欠点を探し、自分の優位性をアピールします。
- 相手の小さなミスを大げさに指摘する
- 自分の優位性を示して相手を黙らせる
- 「あなたのため」「それは間違っている」と言い、自分の正しさを押し付ける
こうした行動は、攻撃というより、必死な「防衛本能」なのです。他人より優位に立つことでしか、自分という存在を保てない。そう考えると、少し哀れにさえ思えてきませんか?
承認欲求と「すごい」と言われたい渇望の正体
これらの行動の根底にあるのは、枯渇した承認欲求です。「すごいね」「さすがだね」「羨ましい」と言われることでしか、心の安定を得られません。
これは、幼少期の環境や過去の経験により、自己肯定感が極端に低いことが原因である場合が多いと言われています。自分で自分を認めることができないため、他者からの評価や賞賛という「燃料」を常に外から補給し続けなければならないのです。
マウントを取るのは、ある意味で「私を見て! 私を認めて! 私はここにいるよ!」という心の叫びなのかもしれません。他人の評価に依存し、常に誰かと比較していないと不安でたまらない。それがマウンティングをする人の正体なのです。
職場でよくあるマウンティング行動と見抜くポイント
マウントには様々なバリエーションがありますが、特に職場で頻発するパターンには共通点があります。私が実際に経験し、見聞きしてきた事例を整理してみましょう。相手の言葉の裏にある「本当の意味」を知ることで、冷静に対処できるようになります。
仕事の評価や実績を過剰にアピールする言葉
最もわかりやすいのが、実績アピールです。聞いてもいないのに自分の手柄を話したり、有力者や周りの人との繋がりを匂わせたりする言動です。
- 役職者など決裁権がある人との関わりをひけらかす
- 人のことをダメ出しした上で自分のしてきたことをひけらかす
- 聞いてもいない実績や評価を話してくる
これらの言葉を聞くと、「すごい人だな」と最初は思うと思います。しかし、そのうちに、「果たして、この人は本当にすごい人なのだろうか」と疑問が湧いてきました。
よく考えてみると「私は組織にとって重要な人間である」と周囲(そして自分自身)に言い聞かせているようにも思えますが、実務とのギャップに違和感を感じるはずですし、本当に評価されている人は、周りが自然と噂をするもので、自分で宣伝する必要はないはずです。
他人を下げることで相対的に自分を上げようとする行動
これが最も厄介で、精神的なダメージを受けるパターンです。「アドバイス」という仮面を被って、相手を否定します。
「あなたのやり方だとここが困る」
「普通はここまで言わなくてもわかることなんだけどね」
こうした言葉には、「教えてあげる私(上)」と「できていない君(下)」という構図を固定化させる意図があります。直接的な罵倒も含めて、「心配している」「指導している」という体裁をとるため、一方的に相手を下げて、反論しづらい環境をつくるのが特徴です。相手を下げることで、相対的に自分のポジションを上げようとする、シーソーのような心理が働いています。
なぜ私たちはマウントをとられるとこれほど疲弊するのか
マウントをとられると、単にイライラするだけでなく、どっと疲れを感じたり、家に帰ってもその言葉が頭から離れなかったりします。なぜこれほどまでに消耗するのでしょうか。
人間関係のストレスが心身に与える影響
職場の人間関係によるストレスは、個人の感じ方だけの問題ではなく、社会的な課題としても認識されています。
厚生労働省が公表している「令和5年 労働安全衛生調査(実態調査)」によると、現在の仕事や職業生活に関することで、強い不安やストレスとなっている事柄がある労働者の割合は 82.7% にものぼります。その内容として「対人関係(セクハラ・パワハラを含む。)」は常に上位にランクインしています。
客観的なデータからも、人間関係の摩擦が私たちのメンタルヘルスに与える負荷がいかに大きいかがわかります。マウンティングは、まさにこの「対人関係のストレス」の最たるものです。毎日のように繰り返される小さな攻撃は、確実に心を蝕んでいきます。
私が経験した「言葉の暴力」と心の消耗
私自身、マウントをとられていた時期は、常に「また何か言われるのではないか」という緊張状態にありました。
相手の言葉は、直接的な悪口ではありません。むしろ「心配しているふり」や「冗談めかした言い方」で放たれるため、真っ向から否定しづらいのです。また、わざと人に聞こえるように大きな声で話すこともあります。相手にとっては、この行為も人を下げて、自分を正論者にしている。これがボディブローのように効いてきます。
「私の考えすぎかな?」「私が未熟だからかな?」と自責の念に駆られ、自尊心が削られていく感覚。これこそが、マウンティングによる最大の被害です。言葉による見えない暴力と言っても過言ではありません。
相手の「怖れ」に巻き込まれてしまうメカニズム
心理学的に見ると、私たちは相手の感情に共鳴する性質を持っています。マウントを取る人が抱えている「焦り」や「怖れ」、「イライラ」といった負の感情は、感染しやすいのです。
相手が必死に虚勢を張っているとき、そのピリピリした空気がこちらに伝染し、私たちまで不安定な気持ちにさせられます。つまり、私たちは知らず知らずのうちに、相手の「自信のなさ」や「恐怖」の尻拭いをさせられている状態なのです。他人の感情のゴミ箱にされているようなものですから、疲れて当然です。
マウントへの対処法|相手の「怖れ」を見抜く一言
では、実際にマウントを取ってくる相手にはどう接すればよいのでしょうか。私が試行錯誤の末に見つけた、効果的な対処法をお伝えします。
戦わない・反応しない「スルースキル」の重要性
まず大前提として、「同じ土俵に上がらない」ことが鉄則です。相手がマウントを取ってきたとき、ムキになって反論したり、不機嫌な態度を取ったりするのは逆効果です。相手は「反応があった」と認識し、さらにヒートアップする可能性があります。
最も効果的なのは「暖簾(のれん)に腕押し」状態を作ることです。感情を込めず、事務的に対応する。「へぇ、そうなんですね」「なるほど」と、淡々と冷静に受け流します。これを徹底することで、相手は「この人にマウントを取っても手応えがない(承認欲求が満たされない)」と学習し、ターゲットを変える可能性が高まります。
相手の承認欲求を適度に満たす「すごいね」の効果とリスク
相手は承認欲求の塊です。そのため、「すごいですね」「さすがですね」と言ってあげることで、一時的に満足して大人しくなることがあります。これは短期的な対処法としては有効です。
しかし、これにはリスクも伴います。私が失敗したのは、相手を気持ちよくさせすぎてしまい、「この人は自分の話を聞いてくれる良い人だ(=都合の良いサンドバッグ)」と認定されてしまったことです。これは友達関係に多いと思います。友達の恋愛話を延々と聞かされた経験、ありませんか?本当に恋愛に悩んでいるならともかく、言いたいことは「私はモテるの」ということを聞いて欲しかったんだと、長い経験から学んだことがあります。こちらも真剣にすごいね、そうなんだ〜というから、相手はさらに気持ち良くなってしまい、その結果、自慢話の頻度がさらに増えてしまいました。
「すごいですね」は、ここぞという時の逃げ道として取っておき、乱用しないことをお勧めします。使う場合は、感情を込めすぎず、少し棒読みくらいのテンションで言うのがコツです。
核心を突く質問で相手を冷静にさせるテクニック
私が実際に使って効果的だったのは、相手の意図を淡々と確認する「質問」です。マウントを取る人は、論理的に詰められることや、自分の「怖れ」を見透かされることを嫌います。
例えば、「あなたのやり方は非効率だ」とマウントを取られたとき、
「具体的にどの部分が非効率だと感じましたか? 今後の参考にしたいので教えてください」
と、冷静に、かつ真顔で聞き返します。
他にも
「では、●●さんなら、どう進めますか?細部まで具体的にお聞きしたいです」
と返してみることもよいと思います。
また、自慢話が止まらないときは、
「そうなんですね。ところで、そのお話と今の業務はどう関係するのでしょうか?」
と、悪気のないふりをして聞いてみるのも手です。
冷静な質問は、相手に「この人はコントロールできない。私の術中にハマらない人」と思わせる強力な武器になります。
物理的・心理的な距離の取り方と自分を守る術
言葉での対処が難しい場合、あるいは相手が上司で反論できない場合は、距離を取ることに全力を注ぎましょう。
職場では必要最低限の業務連絡に徹する
職場はあくまで仕事をする場所です。「仲良くしなければならない」という思い込みを捨てましょう。マウントを取る人とは、挨拶と業務連絡以外の会話はしないと決めてしまうのです。
ランチや飲み会も、理由をつけて断りましょう。「最近、資格の勉強をしていて」「体調管理のために早く帰ります」など、角が立たない断り文句をいくつか用意しておくと便利です。接触時間を物理的に減らすことが、最大の防御です。
自分の領域(サンクチュアリ)を守る意識を持つ
物理的な距離が取れないときは、心の距離を取りましょう。
相手が何か言ってきても、心の中で「あ、また『怖れ』が暴走しているな」「かわいそうな人だな」と客観的に実況中継をするのです。相手を「自分を攻撃する敵」ではなく、「人間ウォッチングの対象」として見ることで、言葉を真に受けずに済みます。自分の心の中に、誰も侵入できない領域を持つイメージです。
どうしても辛い時は環境を変える選択肢も必要
もし、マウンティングによって食欲がない、眠れない、会社に行くのが辛いといった症状が出ているなら、それは限界のサインです。
「逃げる」ことは恥ずかしいことではありません。部署異動を願い出る、転職を検討する、休職して心身を休める。これらはすべて、自分を守るための立派な「戦略的撤退」です。あなたの健康や人生を犠牲にしてまで、付き合わなければならない相手など存在しません。
自分の自信を取り戻すために必要なマインドセット
最後に、マウントによって傷ついた自尊心を回復させるための考え方をお伝えします。
相手の評価軸ではなく自分の価値観を大切にする
マウントを取る人は、「地位」「名誉」「お金」「人脈」といったわかりやすい指標でしか人を評価できません。しかし、それはあくまで彼らの価値観です。
あなたにはあなたの大切にしている価値観があるはずです。「誠実であること」「家族を大切にすること」「趣味を楽しむこと」。相手の物差しで自分を測るのをやめ、自分の物差しを取り戻しましょう。あなたが大切にしているものは、相手には理解できないかもしれませんが、それでいいのです。
マウントを取る人は「反面教師」と割り切る
私はその職場の人や友人のおかげで、「本当の自信とは何か」「人に好かれるコミュニケーションとは何か」を深く学ぶことができました。
「あんなふうにはなりたくない」という強烈な反面教師として捉えることで、嫌な経験も自分の成長の糧に変えることができます。「どうすれば相手を不快にさせないか」を誰よりも知っているあなたは、きっと素敵な人間関係を築けるはずです。
あなた自身の価値は誰にも傷つけられない
どんなにひどい言葉を投げかけられても、あなたの人間としての価値は1ミリも減りません。それは、誰かが勝手に決めるものではなく、あなた自身の中に確固として存在するものです。
マウントを取る人の言葉は、彼ら自身の「怖れ」の表れにすぎません。そのことを理解して、「私は私で大丈夫」そう自分に言い聞かせて、煩わしいものに流されないようにしたいですね。
