年末調整の還付金はいつ？仕組みをわかりやすく解説
今年も残すところあとわずか。12月は賞与（ボーナス）も嬉しいですが、もう一つ密かな楽しみがあります。それが「年末調整の還付金」です。私の会社では12月の給与と一緒に振り込まれるので、今月は少しお給料が楽しみな気がしています。
でも、社会人になりたての頃は、年末調整の書類を書くのが本当に面倒で、そもそも何のためにやるのか、還付ってどういう意味なのかと疑問だらけでした。実際のところ、年末調整について詳しく説明ができる人ってあまりいないのかもしれません。
そういう私も説明してと言われると、ゴニョゴニョしてしまいそうなので、この記事で、整理してみたいと思います。年末調整がよくわからない方、還付金が戻ってくるのか、取られるのか、その仕組みについて、できるだけわかりやすく解説したいと思います。
「年末調整」って、結局なんのためにやるの？
毎年秋頃になると会社から提出を求められる年末調整の書類。まずは、この手続きが一体何のために行われるのか、その目的から見ていきましょう。
面倒な書類提出はちゃんと意味がある提出物だった
正直に言うと、社会人経験が長くなった私でさえ、最初の頃は年末調整の意味なんて全く考えていませんでした。秋頃になると会社から配られる書類に、言われるがままに名前や住所を書き、保険会社から届いたハガキを貼り付けて提出する…。毎年恒例の、ちょっと面倒な作業くらいの認識でした。
でも、この仕組みを少し理解するだけで、ただの作業から、自分のお金に関わる大切な手続きだと感じると思います。
毎月の給料から天引きされている税金（所得税）の精算をしています。
年末調整を一言でいうと、「毎月のお給料から天引き（源泉徴収）されていた所得税の、1年間の精算」です。
会社員の場合、毎月の給与や賞与から所得税が天引きされています。ただ、この毎月引かれている税金の金額は、あくまで「仮の概算額」なのです。
そこで、1年間の給与総額が確定する年末に、その人の状況に合わせて「正しい年間の所得税額」を改めて計算します。そして、これまで「仮払い」してきた税金の合計額と比べて、
- 払いすぎていたら…お金が戻ってくる（還付）
- 足りなかったら…追加で支払う（徴収）
この一連の精算手続きこそが、年末調整の正体です。
なぜ毎月の税額は「仮の金額」なの？
では、なぜ毎月引かれる税金は「仮の金額」なのでしょうか。
その理由は、1年の途中で給与が変動したり、扶養家族の状況が変わったりすることがあるからです。
- 年の途中で昇給した
- 結婚して配偶者を扶養に入れることになった
- 子どもが生まれて扶養家族が増えた
- 生命保険に新しく加入した
こうした個人の状況の変化は、毎月の給与計算にはすぐには反映されません。そのため、国税庁が発行している「給与所得の源泉徴収税額表」に基づいて、まずはざっくりとした金額を天引きしています。この税額表は、社会保険料などを引いた後の給与額と扶養親族の数に応じて決まる仕組みです。
この「ざっくりとした金額」と、個人の事情をすべて反映した「本来納めるべき正しい金額」とのズレを、年末にきっちり精算するのが年末調整の役割というわけです。
年末調整の還付金、あなたの会社はいつ戻ってくる？
さて、一番気になるのが「還付金はいつ戻ってくるの？」という点ですよね。これは会社の経理スケジュールによって少し異なります。
一般的には「12月か1月の給料日」が多いです
多くの会社では、12月か1月の給与が支払われるタイミングで、年末調整の還付金も一緒に振り込まれるケースが一般的です。
国税庁は、年末調整の事務手続きについて「その年最後の給与を支払うときに行う」としています。そのため、多くの企業が11月頃に社員から必要書類を回収し、12月もしくは1月の給与計算に間に合わせるように処理を進めます。
給与明細のココをチェック！還付金の確認方法
還付金が振り込まれた月は、給与明細をしっかりチェックしてみましょう。会社によって表記は異なりますが、以下のような項目名で記載されていることが多いです。
- 年末調整還付
- 年調過不足
- 所得税還付
「控除」の欄にマイナス表記で金額が書かれていたり、「支給」の欄にプラスで記載されていたりします。いつもより手取り額が多いなと感じたら、この項目を探してみてください。逆に、不足額を支払う「徴収」の場合は、マイナスの金額（控除額が増える形）で記載され、手取りが減ることになります。
なぜ還付金が戻ってくるの？その仕組みをわかりやすく紹介
では、具体的にどのような計算を経て、還付金が発生するのでしょうか。ステップごとに見ていくと、意外とシンプルです。
STEP1：1年間の給与・賞与が確定する
まず、その年の1月1日から12月31日までに支払われた給与と賞与（ボーナス）の合計額、つまり「年収」が確定します。この金額が、税金計算のすべてのスタート地点になります。
STEP2：各種「控除」で税金の対象額を減らす
次に、STEP1で確定した年収から、さまざまな「控除」を差し引いていきます。控除とは、簡単に言うと「税金の計算対象から外してもらえる金額」のことです。
控除には、すべての納税者に適用される「基礎控除」や、会社員なら誰でも適用される「給与所得控除」のほか、扶養家族の有無や生命保険の加入状況など、個人の事情に応じて適用されるものがたくさんあります。この控除額が大きいほど、税金の計算対象となる金額（課税所得）が少なくなります。
STEP3：正しい「年間の所得税額」が決まる
STEP2で計算した「課税所得」に、所得税の税率を掛けて、その年に納めるべき「正しい所得税額」を算出します。
（年収 － 各種控除額） × 所得税率 ＝ 正しい年間の所得税額
所得税の税率は、課税所得の金額に応じて5%から45%までの7段階に分かれています。
STEP4：「仮払いした税金」との差額が還付・徴収される
最後に、STEP3で計算した「正しい年間の所得税額」と、1年間で給与から天引きされてきた「源泉徴収税額の合計」を比べます。
- 源泉徴収された合計額 ＞ 正しい所得税額 → 差額が「還付」される
- 源泉徴収された合計額 ＜ 正しい所得税額 → 差額が「徴収」される
多くの人は、生命保険料控除などを年末調整で初めて申告するため、結果的に払いすぎているケースが多く、還付金が発生しやすくなっています。
還付金はいくら戻ってくる？金額に影響する「控除」ってなに？
還付金の金額を左右するのが、先ほど出てきた「控除」です。ここでは、還付金額に特に影響しやすい代表的な控除をいくつか紹介します。
扶養家族が増えた年は還付金も増える？
結婚して配偶者の年収が一定額以下だったり、子どもが生まれたりして扶養家族が増えると、「配偶者控除」や「扶養控除」が適用されます。これにより課税対象となる所得がグッと減るため、還付される金額も大きくなる傾向があります。
例えば、16歳以上の子どもを扶養している場合、所得税で38万円の扶養控除が適用されます。仮にあなたの所得税率が10%なら、38万円 × 10% = 38,000円も年間の税額が安くなる計算です。
生命保険や地震保険に入っていると税金が安くなる
個人で生命保険や医療保険、個人年金保険、地震保険などに加入している場合、支払った保険料の一部が所得から控除されます。これが「生命保険料控除」や「地震保険料控除」です。
秋頃に保険会社から「控除証明書」というハガキが届くので、これを年末調整の書類に添付して提出するのを忘れないようにしましょう。
iDeCo（イデコ）も年末調整で忘れずに申告しよう
個人型確定拠出年金「iDeCo（イデコ）」に加入している人は、その年に支払った掛金の全額が「小規模企業共済等掛金控除」の対象になります。これは節税効果が非常に高いので、加入している方は必ず申告しましょう。iDeCoの場合も、国民年金基金連合会から控除証明書が送られてきます。
年末調整の書類、面倒がらずに正しく書くのが一番の節税
年末調整は、会社が私たちの代わりに税金の計算と納税をしてくれる、とてもありがたい制度です。その恩恵を最大限に受けるためにも、書類は正しく提出しましょう。
提出が遅れたり、忘れたりするとどうなるの？
もし書類の提出を忘れたり、会社の期限に間に合わなかったりすると、会社では年末調整をしてもらえません。その場合、生命保険料控除や扶養控除などが適用されないままの税額になってしまいます。
そうなると、本来受けられるはずだった還付金が受け取れなくなってしまうので、自分で「確定申告」をする必要が出てきます。税務署に行って手続きをするのは年末調整よりずっと手間がかかるので、会社の期限はしっかり守るのが得策です。
また、年末調整とは別ですが、医療費の金額が多かった人も医療費控除を使う場合は確定申告が必要です。ふるさと納税のワンストップ特例を行なっている人は、確定申告の際に再度、寄附金控除の申請が必要になりますので、注意をしてください。またこの話は、確定申告の時期に書きたいと思います。
「年末調整」と「確定申告」って何が違うの？
最後に、よく混同されがちな「年末調整」と「確定申告」の違いを簡単に整理しておきます。
| 年末調整 | 確定申告 | |
| 誰がやる？ | 会社がやってくれる | 自分でやる |
| 対象者 | 会社員（給与所得者） | 個人事業主、年末調整できなかった会社員など |
| 目的 | 給与所得に対する所得税の精算 | 1年間のすべての所得に対する所得税の計算・申告 |
| 時期 | 年末（11月〜12月頃） | 翌年の2月16日〜3月15日 |
簡単に言うと、会社員のための簡易的な税金精算手続きが「年末調整」で、それ以外の人や、年末調整では対応できない控除（医療費控除など）がある人が行うのが「確定申告」と覚えておくと理解しやすいと思います。
年末調整を理解すると、自分のお金の流れがもっとクリアになります
今回は、年末調整の還付金がいつ戻ってくるのか、そしてその仕組みについて紹介しました。
最初は「面倒な手続き」と感じるかもしれませんが、その仕組みを少し知るだけで、自分のお給料からいくら税金を納めていて、どんな理由でお金が戻ってくるのかが見えるようになります。それは、自分のお金の流れを理解する第一歩です。
ぜひ今年の年末調整では、給与明細の「還付額」をチェックしてみてください。そして、その金額の理由を少し考えてみるだけで、来年からの税金についても理解が深まると思います。